A. 回答:個人的に障害を克服したという感覚はありません。今でも自分の体のことで落ち込むことや思い悩むことはあります。しかし、車椅子での今の生活がマイナスかと聞かれたら、「全くそんなことはない」と言い切れます。理由は、この体になってから、出会った人や学んだことが多過ぎて、この障害なしに中村珍晴を語ることはできないからです。今ではこの障害が、私を構成する大切な一側面になっています。
医療・福祉の現場では「障害を受容しなければ前に進めない」と言われることがありますが、私はこの考えに反対です。受容は目指して獲得できるものではありません。今の自分にできる最善を積み重ねていくと、ふと振り返ったときに「障害に対する捉え方が変わったかな」という自分に気がつくことがあります。この状態こそ「障害を受容した」状態だと思います。つまり、受容は目指して獲得できるものではなく、「変えられること」に向き合い行動した結果として生まれる感覚だと考えています。
困難は克服しても良いし、克服しなくても良いと思います。それよりも私は今を懸命に生きることを大切にしています。